渓流手帖

江の川

広島県

中国山地を真っ二つに断ち切って日本海へ抜ける江の川の、いちばん上流の区間。広島県と島根県の境にそびえる阿佐山(1,218m)に源を発し、北広島町の大朝、新庄、千代田、川井を下り、安芸高田市の八千代町土師、吉田町、甲田町を通って、三次市で馬洗川と合わさる。法定の川の名前は江の川だが、三次より上流を地元の人は可愛川(えのかわ)と呼んで使い分けていて、橋の銘板にもそう書かれている。可愛の字は日本書紀の「安芸国可愛之川上」から来ていると伝わり、吉田を流れる川をそう呼んだのが始まりだという。 広島市から国道54号を北へ走ると、八千代町の上根で標高267mの峠を越える。ここが瀬戸内海と日本海の分かれ目で、峠から北へ落ちた雨はこの川に入る。峠が267m、吉田の町が約200m、三次が155mと、奥へ行くほど土地が低くなるので、広島の平野から「上って行く」つもりで走った先を、川は逆向きに下っている。 水源から10kmほどで流れが急にゆるやかになり、そこから下は川沿いに集落の少ない、平坦で長い流れが続く。土師ダムより上の源流域にはオオサンショウウオが棲み、ヤマメ、ゴギ、アカザ、カジカ、オヤニラミが記録されている。ダムから下流の中流域はアユ、ウグイ、オイカワ、カワムツの川に変わる。川井の観測所で測った流域の面積は251平方キロメートル、ふだんの流量は毎秒7.5立方メートルほど。年の平均気温は11〜13度、冬は平野部で20日、山あいで50日ほど雪が積もる。 この川の看板は本流のヤマメで、広島市内から1時間ほどで入れる。広島の釣り人が平成のはじめから平成18年にかけて書き残した記録を読むと、29.5cmから39cmまでの尺前後が、春先から夏の終わりまで途切れずに出ている。砂地で平坦なポイントが多く、川の規模のわりに大きな魚が着く。瀬ではクロカワ虫がいくらでも取れる。竿は6.1mから8.1m、糸は0.6号、餌はドバミミズやバッタ。大水が出たときは、川幅いっぱいに流れているポイントをあえて狙うのがこの人のやり方で、魚の逃げ場が限られるぶん勝負が早いという。 シーズンの初めに育った魚がまとまって放たれる川なので、最初の数日は人が多く、その後は魚が薄くなると地元の釣り人が繰り返し書いている。放流の中心になっているのは最上流で本流が呼び名を変える筏津川の筋で、ここは二面護岸の堰堤が多く、釣り荒れも早い。本流で大きな魚を狙うなら、人の集まる時期を外して増水を待つほうがよさそうだ。 最上流の大谷(旧芸北町)には、広島県でゴギが昔から自然に棲んでいたとされる数少ない谷がある。1996年にまとめられた芸北町の淡水魚の調査は、この町ではここだけがゴギ本来の生息地で、分水嶺の向こう側にいるゴギは人の手で持ち込まれたものだろうと書いている。いまは大谷の集落と地元の組合が手を組んで魚を守っていて、この一帯には毛ばりだけで釣る区間と、年間を通して竿を出せない区間が設けられている。大朝の矢淵は、野口雨情が大朝小唄に「秋の矢淵はエ あかねの紅葉セ」と詠んだ渓で、なだらかな大朝盆地では珍しく急で水が冷たく、昔からゴギが棲むと言い伝えられてきた。 本流に注ぐ川は多いが、釣り人の書いたものが残っているものはごく少ない。志路原川と岩戸川は、日本中を回って釣り歩く人が2019年の夏に源流まで入っているが、どちらもヨシノボリばかりでイワナには出会えず、この水系はイワナが絶滅しているような気がする、と書き残した。大谷川はゴギを守るための川で、源流を目指した同じ人が竿を出せずに引き返している。簸ノ川、出原川、冠川、寺原川、田原川、大塚川、琴平川、大倉川、二重谷川、多治比川、生田川、本村川にも魚はいるはずだが、記録が見つからなかったので個別のページは作っていない。 流域には毛利氏の郡山城(吉田)と多治比猿掛城の跡があり、志路原川との合流点のあたりには国の重要文化財の仏像を12躯おさめた古保利薬師堂が建つ。田植えのはやし田と神楽が受け継がれてきた土地でもある。昭和47年7月の梅雨前線豪雨では2日で373mmが降り、大朝で床上浸水142戸という流域最大の被害が出た。 読み方は「えのかわ」。広島県には同じ字の可愛川がもう1本あり、廿日市市を流れて瀬戸内海に注ぐ二級河川のほうが法定の可愛川になる。検索すると廿日市の川の水位や風景がたくさん混ざるので、北広島町、安芸高田市、大朝、千代田といった地名を足して探したい。下流の名前である江の川(ごうのかわ)で引くと、三次より下のアユとサクラマスの話に変わる。

管轄漁協:可愛川漁業協同組合

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釣行記13

釣り方:
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