渓流手帖

甲子川

岩手県

岩手県釜石市を西から東へ横切り、市街地を抜けて釜石湾に注ぐ二級水系の本流。遠野市との境にある仙人峠に源を発し、流程はおよそ20数キロメートル。市内では鵜住居川と並ぶ二大河川のひとつで、国道283号とJR釜石線が川沿いを上っていく。 釜石市のなかでは珍しく、川の全体が市街地とすぐ隣り合っている。土手を登れば住宅が迫っているような場所でも渓流魚が育っていて、訪れた書き手は「海の魚介類が豊富なので渓流釣りをする人は少ないのでは」と思ったところ、実際には地元のフライマンが多いと教えられたと書いている。 対象になる魚は幅が広い。淡水域ではヤマメ、イワナ、その降海型のアメマス、サクラマスとその降海前の銀毛である「ヒカリ」、ウグイ(地元では「オゲ」、婚姻色の出たものは「アカハラ」)、アブラハヤ、アユ、ウナギ。まれにカラフトマスも姿を見せる。汽水域ではハゼやヌマガレイが釣れる。秋にはサケが遡上してくるが、サケは県の規則で採捕が禁じられているので釣ってはいけない。 流程はそれほど長くないのに大きなヤマメが出るフィールドとして知られ、早春には下流の橋上市場のあたりでもアメマスが釣れる。春先のアメマスが必ず上がる好ポイントとして、上中島と源太沢を結ぶ新開橋の名が挙がる。5月にはアユの稚魚が堰堤を大挙して駆け上がり、それを追ってウミネコが海から飛んでくる。県立病院のそばの橋より上流ではウグイの瀬づき(産卵)が見られ、上空をミサゴが旋回する。 季節ごとの様子は、通った人の記録からこう読める。3月1日の解禁直後は水が少なく、スプーンやミノーにはまったく反応が出なかったという年がある一方、川虫を使った細糸のエサ釣りでは浅いトロ場の底波を流して13センチから20センチのヤマメが1日に15匹から20匹出ている。雪代が入る前の午前中のほうが反応がよい。4月下旬から5月初めは雨のあとのアメマスで、早朝に38センチを頭に5匹、同じ春の別の日には48センチという記録がある。背中の青い、海から上がったばかりと見える魚も混じる。アユ保護の川止めが明けた7月上旬には幅広のヤマメが釣れている。9月は小型のヤマメが数多く出る時期で、釜石高校の裏から入った人が10センチから18センチを10数匹、別の日に30センチを釣り、木の下の深みを50センチほどの魚が悠々と泳いでいくのを見ている。 中流域は川が開けていて、日が高くなると厳しくなる。連休には同じポイントを2日でのべ30人ほどがエサ釣りやルアーで釣り上がっていったという、川沿いに実家のある人の観察がある。大きな出水のたびに川の形が変わり、2007年9月の増水では川幅が3分の1ほどに狭まり、それまでのポイントがつぶれた場所があった。 地元の人は、本流で釣れるヤマメやイワナは放流された魚が中心で、天然のイワナは支流をずっと奥まで詰めた先にいると話している。そうした場所はクマの出る山の奥で、山を知った人と一緒でなければ入れないという。ヤマメとイワナの稚魚は協力金をもとに毎年放されていて、2026年は6月9日に放流があった。 昭和20年代から30年代にこの川で育った人は、当時から鑑札というものが無かったこと、河口は製鉄所の排水が流れ込んでいたのに上流にはアメマスもウナギもモクズガニも多かったこと、凍りつくような冬の学校帰りに大きなアメマスを釣ったことを書き残している。 2016年、岐阜県で開かれた清流めぐり利き鮎会でグランプリに輝いた。出品した地元の人は「川を守る市民への賞」と語っている。アユの天然遡上は2000年代の後半から増えてきていて、自然条件の変化のほか、下水道の整備、人口の減少、産卵場の保護が理由として挙げられている。 近年は渇水が深刻で、夏に川底が見えるほど水が細る年がある。かつては釜石製鉄所の巨大な工業用水をまかなえるほど水量の豊かな川だった。 上流部の陸中大橋から大橋にかけては釜石鉱山の町で、源流部は旧鉱山の敷地の中を流れる。中流から上流は洞泉(どうせん)、松倉、小佐野といった集落を縫い、地元の釣具店が出している釣り場の案内では下流から上流へ、新開橋、2号の橋、釜石駅裏、礼ヶ口、小佐中裏、野田大橋、立花橋、松倉橋、坪内橋、不動の橋、洞泉橋、一の渡の12か所がヤマメのポイントとして並ぶ。 「釜石」という地名の由来になったとされる釜の形の巨岩が、この川沿いにある。アイヌ語に由来するという説も有力とされている。 支流には荒川、枯松沢川、小川川、大沢川、唄貝沢、大仙沢、礼ヶ口沢、久保沢、板ヶ沢、大舟沢、第一甲子川などの名が知られている。このうち釣りの記録が見つからなかった川は、個別のページを作っていない。 読み方は「かっしがわ」。国土交通省の観測所一覧も、市内の甲子町(かっしちょう)の読みも「かっし」で、地元もそう呼ぶ。資料によっては「かつしがわ」と小さくない「つ」で書かれていることがある。 同じ名前で紛れやすいものが多い。兵庫の甲子園、福島の甲子温泉や甲子山、釜石の名産である甲子柿は、どれもこの川とは関係がない。また釜石市内には荒川が2つあり、この川の支流の荒川は甲子町、もうひとつは唐丹町の地名である。

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支流・沢1

釣行記90

釣り方:
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