渓流手帖

三瀬川

山形県

鶴岡市の南部、豊浦地区の三瀬集落で日本海に直接注ぐ二級河川。河川延長は4.6キロ、水系に属する河川は4本という小さな独立水系で、鶴岡市の海岸には岡町川、油戸川、村上川、長者川、楯下川、天竜川、巌沢川、出口沢川、早田川といった、長さ数百メートルから一キロ余りの短い二級水系が並ぶが、そのなかで三瀬川だけが飛び抜けて長い。三方を山に囲まれ西を海に開く三瀬の平野部を流れ、周囲の山は葉山が154メートル、八森山が416メートル、藤倉山が654メートル。荘内地名辞典は「中山、水無の沢に発して、三瀬で海に入る」と書いている。地元には、降矢川、水無川、西川の三つの川つまり三つの瀬が合わさって三瀬川になるので三瀬という、という言い伝えがある。地名研究の側からは異論があり、瀬は川の一部で浅くて歩いて渡れるところを指すのだから、三瀬川は歩いて渡れる浅瀬が三つある川のことだろう、という説が出されている。義経記に出てくる三世の薬師堂の三世が三瀬に変わったという見方もある。県の一覧が数える4本は三瀬川、降矢川、藤倉川、西川で、河口から順に東から降矢川、南から西川が入り、藤倉川は降矢川の支流にあたる。最上流部に入る水無川はこの4本に含まれない小さな流れである。西川は地元では農業用水路と呼ばれている。水無は三瀬駅の東南に入る山地の小字で、土地が砂質のため山からの水が伏流し、時間を分けて田に水を配る番水が行われたという。三瀬は越前、加賀、飛騨から入植した人たちが拓いたと伝えられ、それぞれの氏神である氣比神社、白山神社、水無神社が今も祀られている。釣り場としては、山形県で最上川と赤川以外に直接海に注ぐ中小河川は月光川、日向川、この三瀬川、五十川、温海川、庄内小国川、鼠ヶ関川の七本で、そのすべてにサクラマスが遡上する、と地元のサクラマス釣り師が2014年に書いている。遡上数は少ないが赤川や最上川がだめなときの逃げ場になり、尺以上の大ヤマメや50センチ以上の大イワナも釣れるので、外道がほとんど無い下流部の最上川や赤川以上に飽きずに釣りができるという評価だった。サケも上る川で、加茂水産高等学校が2008年度から知事の特別採捕許可を得て三瀬川でシロザケを採り、人工授精させて校内で育てた稚魚を三瀬川に放流している。2008年11月には宮前橋の上流付近で体長60から80センチのサケ7匹が捕られ、2011年5月には稚魚およそ1000匹が放流された。親魚が上るのは10月ごろで、地元の三瀬小学校とは毎年サクラマスの放流でも合同授業を続けている。三瀬小学校の5年生は1999年度から毎年、地区内の川で水質調査を行っており、2011年は水無川と西川の合流点、三瀬川と降矢川の合流点、学校近くの降矢川の三か所で水生生物を採った。学校近くの降矢川は濁りもにおいも少なく、ドジョウや水生の昆虫、アメンボが多く捕れている。ただし、この川そのものを釣った記録として公開されているものは見あたらない。三瀬で釣りといえば海側の三瀬海岸と三瀬漁港のクロダイやキスを指すことがほとんどで、川の釣行記は流通していない。制度の面がこの川の特徴になる。三瀬川水系には第五種共同漁業権が設定されていない。山形県の内共第1号から第26号までの漁場のどこにも三瀬川は入っておらず、遊漁料を納める先が無い。2025年に鶴岡周辺で遊漁券なく釣りができる川はあるかと尋ねられ、水産庁の資料まで当たった人が、鶴岡市の主要な河川はすべて漁業権の区域で、券の要らない水域は地図に名前も載らないような小規模な川しかない、と答えたことがあった。三瀬川はその答えから漏れている。もっとも、漁業権が無いことは何をしてもよいという意味ではなく、山形県漁業調整規則と水産資源保護法は県内のすべての河川に及ぶ。さけは周年採捕禁止で、増殖のために知事の許可を受けた場合だけが例外になる。加茂水産高等学校の採捕はこの許可によるものである。海で育って戻ってきたサクラマスは9月1日から2月末日までが禁止なので、裏を返すと3月1日から8月31日まで。漁協のある温海の四渓流はサクラマスの解禁を4月1日に置いているが、三瀬川にはその上乗せが無い。ヤマメとイワナ、ヒメマスは10月1日から翌年3月31日までが禁止で、釣れるのは4月1日から9月30日まで。アユは11月1日から6月30日までが禁止になる。全長制限はヤマメ、イワナ、ニジマス、ヒメマスが15センチ以下、ウナギが30センチ以下で、サクラマス、ヤマメ、イワナ、ニジマス、サケ、カジカの産んだ卵を採ることも禁じられている。爆発物や有毒物を使う漁法、水中に電流を通じる漁法、コイやサクラマスをやすで突く漁法、板押、瀬干、すがぜめ、火光を利用する漁法、箱せんとびんせんなども県の規則で禁止されている。県が定める水産動植物の採捕禁止区域の表に三瀬川は挙がっていない。現地の注意がいくつかある。藤倉山はヤマビルの山として知られていて、登山道沿いを歩くかぎり被害に遭うことは稀だが、山菜やキノコを探して沢筋に入り込むと必ず遭遇すると地元では言われている。水無神社から獅子畑登山口へ続く水無川沿いの林道は轍が深く、普通車での走行は厳しい。その水無川の上流には床止めが9か所あり、一番下のものは市の天然記念物である藤倉のスギの近くにある。地元の山の会が山形大学農学部と一緒に確認したもので、今も土石流を防ぐ役目を果たしているという。河口近くの宮前橋には国土交通省の簡易型河川監視カメラと危機管理型水位計があり、出かける前に水位と濁りを見ることができる。日本海東北自動車道の三瀬インターチェンジはハーフインターで、三瀬からあつみ温泉や新潟の方へ向かうことも、その方面から三瀬で降りることもできない。増水は速く、2007年7月の豪雨では三瀬川が増水して海水浴場用に河口へ架けていた木製の橋が流され、2022年8月の豪雨では降矢川がかなり増水して氾濫の危険があり、2023年5月には降矢川に土砂が流れ込んで取水路をふさいでいる。名前で紛れやすいものが多い川でもある。三瀬は佐賀市の三瀬村、三重県大紀町の三瀬谷にもあり、三瀬川と検索すると嘉瀬川上流や宮川筋の記事、それに三途の川の別名であるさんぜのかわが混ざってくる。水無川は同じ鶴岡市でも旧櫛引町と旧朝日村の間に別の一本が流れており、神奈川県秦野市、新潟県の魚沼と村上にも同名の川がある。藤倉川は埼玉県秩父の吉田川筋にも、西川は各地にある。

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