渓流手帖

渋海川

新潟県

十日町市浦田の長野県境にある三方岳・天水山のあたりに源を発し、東頚城丘陵を穿ちながら北へ流れて、長岡市下山で信濃川に合流する一級河川。信濃川に注ぐ県内の河川ではいちばん長く、一級河川としての指定延長は70.6キロ、源流から河口までを測ると83キロという調査もある。信濃川本流とほぼ平行して流れ下るのが特徴で、松代地区を過ぎるあたりから激しく蛇行する。 釣りの対象になるのは上流部にかぎられる。渓流魚が確認できるのは浦田から上で、それより下流でイワナが釣れたという記録は少ない。国道403号が渋海川を渡る台門橋(十日町市中立山)のあたりから始める人が多く、橋から600メートルほど下った地点でイワナが出ている。県道243号がかかる浦田の中島橋の上流には高い砂防堰堤があり、その先は成果が乏しい。源流部は浦田から深坂峠に向かって詰めていく区間で、右の支流もそれなりの水量があり、初夏でも最源流部は雪に覆われている。25センチのイワナが出た記録がある。 この川の難しさは水の変わりやすさにある。基盤が魚沼層と第三紀層の砂岩・泥岩で浸食を受けやすいため、わずかな出水でも泥濁りになる。5月上旬の浦田付近は残雪が厚く川辺を覆っていて、日中に気温が上がるとその雪代がすぐ濁流に変わる。里が初夏を迎えるころになってようやく人を受け付けるようになる、と地元の書き手は書いている。 下流は完全な里川で、2010年から2012年の魚類調査ではイワナもヤマメも確認されていない。オイカワ、ウグイ、カジカ、アカザ、アブラハヤなどが中心で、信濃川との合流点近くにはコクチバスが入っている。一方でサケは越路と小国の境にある鷺之島橋の下流まで遡上し、産卵行動も確認されている。江戸時代前期の1680年代には旧川西町の仙田地区までサケが上ったという記録が残る。 流域の景観をつくったのは瀬替えである。江戸中期ごろから、蛇行した流れを山を削って直線化し、もとの河道を耕地にすることが室野・松代・仙田の各地区で盛んに行われてきた。その結果として流速が増して河床が下がり、各所に床固が設けられて、長い湛水域と床固直下の早瀬をくりかえす今の姿になった。瀬替えでできた耕地は「新田」と呼ばれることが多い。 鈴木牧之の『北越雪譜』(1837年)には渋海川が二度登場する。初編巻之中の「渋海川ざい渉り」は凍った川の氷が割れて轟々と流れる様を花見のように眺めたという話、初編巻之下の「渋海川さかべつたう」は春に何百万という虫が川下から川上へ川面を上っていく様を描いたもので、「渋海川奇蝶之図」という絵まで残っている。牧之は石蚕(イサゴムシ)の親だと書いており、トビケラ説とカゲロウ説がある。実際この川ではカワゲラやモンカゲロウが採れ、餌に使われている。 支流では越道川、亀石川、東川に釣行の記録がある。長岡市小国町の側には国沢川、土口川、桐沢川、野又川、芝ノ又川、楢沢川、細田川、沢田川、増沢川といった支流が並ぶが、釣行記はほとんど残っていない。個人サイト「岩魚の世界」がこの水系を8つのエリアに分けて入渓地図を出しているので、そこが手がかりになる。越路町岩田の五十鈴川は、かつて雨が降っても濁らない清流でヤマメが獲れたが、上流に林道ができて土砂採取が始まってから濁るようになり、2001年の時点で地元の人が「もうヤマメはいないはず」と書いている。 十日町市仙田で長く続いていた渋海川魚つり大会は、令和6年度をもって終了した。越路のあたりでは渋海川のことを「大川」と呼ぶ。 この水系には漁業協同組合が無い。新潟県の第五種共同漁業権は内共第1号から第22号までの22本で、渋海川にかかるのは信濃川とその支川を対象にした内共第10号だけだが、その漁場区域からは「長岡市塚野山地内の小坂橋下流端から上流の渋海川」が除かれている。県の漁場図でも小坂橋の位置に印があり、そこから上流は支流までまとめて漁場の色が塗られていない。つまり河口近くのわずかな区間をのぞいて、渋海川の流域は丸ごと漁業権の外にある。生物多様性保全ネットワーク新潟が2010年から2012年に行った調査報告「渋海川の魚類相」にも、サケやアユなどの有用魚は迷入する程度で内水面漁業は成り立たず、魚沼漁業協同組合の漁業権も塚野山の小坂橋より上流には及ばない、と書かれている。 したがって遊漁券は無く、放流も監視も行われていない。かわりに新潟県漁業調整規則が全域にかかる。第37条により、いわなとやまめは10月1日から翌年2月末日までが採捕禁止で、実質の期間は3月1日から9月30日まで。全長15センチ以下のいわな・やまめは一年を通して採捕できない。第35条は電流、瀬干し、ごろかけ、潜水器、水中銃、火光による採捕を禁じている。ブラックバス類とブルーギルは再放流も禁止されている。 検索するときは「小国」に注意したい。この水系の小国は長岡市小国町(旧・刈羽郡小国町)だが、検索結果は山形県西置賜郡小国町と最上小国川に丸ごと持っていかれる。

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支流・沢2

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